マウナ・ケアとは、ハワイ語で「白い山」という意味。その名前は、山頂が雪で覆われることから来ています。標高が高いため、冬には積雪が見られることがあり、熱帯地域の山には珍しい特徴です。
標高4,205mは、ハワイ諸島でもっとも高い火山ですが、海底からの高さ10,203mは、エベレスト8,848mを抜いて世界一高い山でもあります。
世界屈指の天体観測スポットであり、山頂には日本の「すばる望遠鏡」が設置されています。
天体観測ツアーに参加すると、すばる望遠鏡の内部も見学することができました。
この記事では、マウナケア天文台群の特徴と、山頂からの景色を紹介します。
マウナ・ケア天文台群
マウナ・ケアの特徴
山頂の晴天日は年間300日以上。北緯20度の低緯度に位置し、北天と南天の両方が観測できます。
マウナ・ケアは、活動を休止しているものの、いまだに活火山として分類されており、最後の噴火は約4,000年前とされています。
太平洋中央に浮かぶハワイ島の最高峰で、周囲に大都市がなく空気が非常に乾燥しています。これに加えて、赤道に近く南北の星空が両方見られるため、宇宙観測に理想的な条件が整っています。また、対流圏の約40%の位置にあるため、大気が安定し、光の散乱や天候の影響が少ないことで鮮明な観測ができるのです。
また、ハワイの先住民にとって、マウナケアは神聖な山とされ、神話や伝説でも重要な役割を果たしてきました。山頂は「天の王国」や「神々の住処」として崇拝され、ハワイ文化において深い意味を持っています。
世界の天文台群
マウナ・ケア天文台群には、世界11か国13基の大型望遠鏡が設置されています。以下はその一例です。
1. すばる望遠鏡
日本が運営する光学・赤外線望遠鏡で、口径8.2mを誇ります。観測範囲が広く、深宇宙の銀河や星形成領域の詳細な観測が行われています。
2. ケック天文台
世界最大級の光学赤外線望遠鏡で、二基の10m鏡を持っています。干渉計技術を使ってより高解像度の観測が可能です。
3. ジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡
イギリスを中心に運営されているサブミリ波望遠鏡で、星や惑星の形成、宇宙背景放射などを研究するために使われています。
4. カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡
カナダ、フランス、ハワイが協力して運営する光学望遠鏡で、広視野での観測に適しており、銀河や小惑星の観測に貢献しています。
科学的な貢献
マウナ・ケア天文台群は、天文学のさまざまな分野で重要な発見を支えてきました。例えば、太陽系外惑星の観測やブラックホールの観測、銀河の形成過程、星の進化などに関する研究で大きな成果を上げています。また、ケック天文台の干渉計による超高精度な観測は、他の天文台では観測が難しい遠方銀河の詳細な構造解析にも役立っています。
環境保護と文化的配慮
マウナ・ケアは、ハワイ先住民にとって聖地とされています。そのため、天文台建設は環境保護や文化的影響に関する問題も引き起こしています。特に、新たな大型望遠鏡「三十メートル望遠鏡」の建設計画を巡っては、ハワイ先住民の反対運動が現在も続いている状況です。
マウナ・ケア天文台群は、天文学の最前線で貢献する研究施設群であり、宇宙の謎を解き明かすための重要な観測拠点です。しかし同時に、自然環境や文化的な配慮が必要とされる地域でもあり、科学と文化の共存が問われる場所でもあります。
山頂サンセットと星空観測
マウナ・ケア山頂のアクセス
山頂は富士山の標高3,776mより高く、気圧は平地の3分の2しかありません。私達夫婦は、防寒具レンタルと食事が付いた現地ツアーに申し込みました。ツアーには参加条件があり、16歳未満、妊娠中、健康に不安のある方は参加できません。高地に体を慣らすため、ツアーバスは休憩を取りながらゆっくり登っていきます。
山頂に近付くと、下界に雲海が広がっています。マウナケア・アクセス・ロードという道を利用して山頂までやってきましたが、自らレンタカーをチャーターしたり、歩いて登山する人もいました。さすがに4,000m級の山ですから、高山病のリスクがあり、頭痛と息苦しさを覚えます。
すばる望遠鏡の見学
すばる望遠鏡は、日本の国立天文台が運営しており、研究施設として使用されています。一般の観光客が見学するには、ツアーなどによる事前予約が必要です。専門家のガイドに案内されて、すばる望遠鏡の内部を45分間見学することができ、間近で見た望遠鏡の巨大レンズに圧倒されました。
山頂で夕陽が沈むのを待ちます。あたりの山々が、巨大なマウナ・ケアの影に隠れていきます。日本でも影鳥海(日本百名山のひとつ鳥海山の影のこと)という言葉がありますので、「影マウナ・ケア」とでも表現したらよいでしょうか。
そして夕暮れ時。雲海に沈みゆく太陽。幻想的なマジックアワーの黄昏でした。
星空観賞
マウナケアの山頂から見る夜空は非常に美しく、観光客にとって一生の思い出になる体験です。すでに雲の上ですから、夜空をさえぎるものは何もありません。特に晴天の日には、明瞭な夜空が広がり、はるか遠くの銀河を肉眼や望遠鏡で観察することができます。
天体望遠鏡をのぞくと、土星のリングまではっきりと見えましたよ。マウナケアの星空観賞は、大自然が好きな方や天文学に興味のある方におすすめです。
コメント