
アラビアンナイト『千夜一夜物語』は、異国的で夢幻的な世界を描いた物語であり、現実とかけ離れた幻想的な雰囲気を持っている。「アラビアンナイトの夢の跡」とは、夢や幻想が終わった後に残る、どこか儚い印象や、夢を見ていたような感覚を表現するための比喩的な表現である。
スペインには、こんな諺がある。
「グラナダを見たことがない人は、何も見ていないのと同じだ」
スペイン南部アンダルシア地方に位置するグラナダ。グラナダにあるアルハンブラ宮殿は、13世紀に建てられたイスラム王朝ナスル朝の王宮である。
アラビア語で「赤い城」を意味する「アル・ハムラー」に由来し、実際に赤砂岩と赤レンガで築かれた城は、夕陽を浴びてさらに赤さを増す。
イスラム芸術の粋を集めた最高傑作のひとつとされ、1984年に世界遺産登録された。
グラナダ DATA
・面積81.13㎢
・人口23万人
・ベストシーズン3月〜9月
アルハンブラ宮殿

アルハンブラ宮殿は、標高685mの山中にあるため、アンダルシア地方の中では夏でも涼しい。グラナダの起源は、紀元前のイベリア人の街に遡るが、最も繁栄したのは13世紀。ナスル朝グラナダ王国の首都となり、15世紀まで栄華を極めた。丘にたたずむアルハンブラ宮殿は、スペイン・イスラム王朝の最高傑作である。

見どころにひとつとして、アラベスク模様や蜂の巣状の天井装飾ムカルナスが名高い。

そして、「ライオンの中庭」(スペイン語で「Patio de los Leones」)。この美しい中庭は、13世紀末から14世紀初めにかけてナスル朝の王、ユースフ1世とムハンマド5世の時代に建設された。
中庭の中心にあるライオン像が特徴的で、12匹のライオンが並んだ大理石の噴水が中央に置かれている。このライオンたちは、イスラム美術における象徴的なモチーフで、力強さや権威を表現したものだ。
また、この噴水のデザインは、水の流れや音、そして反響を使って神聖で静かな空間を作り出すことに成功した。中庭の周りには柱廊(ピラーアーク)や精緻な彫刻が施された建物が取り囲み、その装飾にはアラベスク模様やコーランの詩が刻まれ、イスラム建築の優雅さが感じられる。
雲ひとつない、絵の具で描いたようなコバルトブルーの空が印象的だった。
ヘネラリフェ

「ヘネラリフェ」(スペイン語で「Generalife」)は、美しい庭園のある別荘で、ナスル朝の王たちにとって、リラクゼーションの場所として重要な役割を果たしていた。「ヘネラリフェ」という名前は、アラビア語で「庭園の庭」や「楽園の庭」という意味を持つ。

華麗で静かな庭園は、アルハンブラ宮殿の北側に位置しており、宮殿から歩いてすぐの距離にある。完成したのは14世紀初頭、ムハンマド5世の時代に重要な改築が行われた。この庭園は、王族が過ごすための夏の別荘として「中庭の中庭」といわれるほど精緻で美しい装飾が施されてる。白い壁に囲まれ、緑の中庭を持つ家屋をカルメンと呼ぶが、スペイン女性の名前に多いカルメンの由来になっている。
庭園と水の調和: ヘネラリフェは、庭園と水が一体となった美しい空間。水はイスラム建築において重要な要素であり、ヘネラリフェでもさまざまな噴水や水路が配置され、涼しげな雰囲気を演出している。特に「水の階段」と呼ばれる階段状の噴水が有名で、そこを流れる水の音が心地よく、訪れる人々に静けさと安らぎを与えている。
美しい花と植物: ヘネラリフェには、色とりどりの花々や植物が植えられ、四季折々の風景を楽しむことができる。これらの庭園は、王族が自然の美しさと調和する空間でリラックスできるようにデザインされたものである。
アーケードと回廊: 庭園内には、柱に支えられたアーケードや回廊があり、これらは日差しを避けるための場所でもあり、また美しい景観を楽しむためのスペースとしても使われていた。回廊から庭園を眺めると、まるで絵画のような景色が広がっている。

さて、グラナダの食事といえば、日本でもおなじみのパエリヤ。スペイン語で、パエージャ。大きなムール貝が美味しかったが、私はハマグリの方が好きかな…
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