現存12天守と国宝5城|姫路城・彦根城・松本城・犬山城・松江城の比較めぐり

国宝5城の姫路城

日本には現存する12の天守てんしゅがあり、日本の歴史的な城の中でも貴重な存在とされています。

また、その中に国宝に指定されている5つの城があり、国宝5城ごじょうと呼ばれています。

現存する12天守とは、日本に現存している本物の天守閣を持つ城のことで、これらは大きな歴史的価値があり、多くは戦火や災害などの試練を乗り越えて現在に残っています。現存する12天守は次の通りです。

現存する12天守

①姫路城(兵庫県)
②彦根城(滋賀県)
③松本城(長野県)
④犬山城(愛知県)
⑤松江城(島根県)
⑥弘前城(青森県)
⑦丸岡城(福井県)
⑧備中松山城(岡山県)
⑨丸亀城(香川県)
⑩松山城(愛媛県)
⑪宇和島城(愛媛県)
⑫高知城(高知県)

そのうち、「国宝」に指定されている城は、特に重要な文化財として日本の歴史や建築技術において特別な位置を占めています。現在、国宝に指定されているのは、次の5つの城です。

国宝5城

姫路城(兵庫県)
彦根城(滋賀県)
松本城(長野県)
犬山城(愛知県)
松江城(島根県)

実際に5つの城をめぐり歩いて比較してみると、それぞれの特徴と時代背景があることに気付きます。この記事では、国宝5城の見どころを紹介します。

国宝5城

国宝の5城は、建築された年代が違うため、それぞれの時代背景が反映されています。数百年前の建築物が、現代に受け継がれていることは、まさに奇跡と言えるでしょう。

5城姫路城彦根城松本城犬山城松江城
異名白鷺城しらさぎじょう金亀城こんきじょう烏城からすじょう白帝城はくていじょう千鳥城ちどりじょう
天守連立式望楼複合式望楼連結式望楼望楼複合式望楼
外観5重6階地下1階3重3階地下1階5重6階3重4階地下2階4重5階地下1階
高さ31.49m15.5m30m18.79m22.4m
築年1,346年1,622年1,504年1,537年1,611年
所在兵庫県滋賀県長野県愛知県島根県
入場1000円800円700円550円680円
見所お菊井戸馬屋月見櫓天守回廊北惣門橋

姫路城

姫路城の概要

姫路城の西大柱

姫路城は、1993年に日本で最初に登録された世界遺産です。

別名、白鷺城しらさぎじょう

屋根瓦と白壁のコントラストが際立ち、威風堂々とそびえる姿が、白鷺が羽を広げたような美しさです。優雅で白い漆喰の壁が特徴で、大きな城郭と複雑な防御施設、広がる城下町が保存されています。

5層の大天守と東・西・いぬいの小天守は、 渡櫓わたりやぐらで結ばれた連立式天守閣。1609年に建築された大天守は、平成の大規模修理を経てよみがえりました。大天守を支える2本の柱が、東大柱と西大柱。その大きさと太さに圧倒されます。

刑部神社

最上階には、刑部おさかべ神社がまつられ、窓から姫路市の360度パノラマが望めます。大天守の高さ31.49mは、当時の日本で最大の高層建築物でした。

姫路城の1,000本桜

1000本桜に映える姫路城

こちらは、春に訪れた姫路城。

白鷺城しらさぎじょうに映える満開の1,000本桜は、圧巻のひとことです。

お菊井戸

お菊井戸

怪談「播州皿屋敷ばんしゅうさらやしき」で有名な、お菊さんの井戸。お菊さんの亡霊が、毎夜「いちま~い、にま~い…」と数える悲痛な声が響きます。

好古園

好古園の池で泳ぐ鯉

こちらは、紅葉の季節に訪れた好古園。姫路市制100周年を記念して造営された日本庭園です。趣きの異なった九つの庭園群を、散策しながら楽しむことができます。姫路城共通券(+50円)を購入すると、お得に入場できます。

姫路動物園

姫路動物園

敷地内に、姫路動物園が営業しています。入園料は、大人210円、小人30円。小ぢんまりとした動物園ですが、子供連れファミリーには嬉しいサービス価格です。

彦根城

彦根城の概要

彦根城とひこにゃん

彦根城は、天守が3階3重の屋根で構成されています。

別名、金亀城こんきじょう

大津城が移築されたもので、美しい庭園を持ち、軍事面にも優れたお城です。また、天守だけでなく、櫓や門も重要文化財として指定されています。天守からは、雄大な琵琶湖が望めます。

馬屋

馬屋

城内に残る馬屋うまやは珍しく、ここ彦根城だけで観ることができます。こけら葺きの屋根が、美しく改修されました。

玄宮園

玄宮園

玄宮園げんきゅうえんは、大規模な池泉回遊式ちせんかいゆうしき庭園。池と周囲を巡る園路を中心に作庭され、桂離宮や兼六園とともに有名です。手前の池と奥に見える鳳翔台ほうしょうだい(茶席)、そして遠くの天守が、バランスよく構図に収まります。

ひこにゃん

ひこにゃんとジャンケン

大人気ゆるキャラ「ひこにゃん」の住まいは彦根城。1日3回、ファンの前に出没します。ジャンケン大会で、大人から子どもまで大盛り上がりです。

松本城

松本城の概要

松本城の外観

松本城は、北アルプスの山々を背景に建立された数少ない平城ひらじろです。

別名、烏城からすじょう

五重天守の実物が見られるのは、国内で姫路城と松本城だけ。五重の天守閣としては、日本最古のものです。

松本城の天守

最上階望楼の天井に、二十六夜神がまつられています。天守から見渡せる緑の蓮池と、赤い埋橋うずみばしのコトラストが鮮やかで、四季折々の風景を楽しめます。

月見櫓

月見櫓

松本城は、平和な時代に建造されました。その象徴が、朱塗りの月見櫓つきみやぐら(写真向かって左のやぐら)に認められます。

櫓の中

月見をするためのやぐらで、北・東・南の戸を外すと三方が吹き抜けになります。防衛が重要な戦乱の世では、考えられない趣向です。

埋橋

埋橋

埋橋うずみばしは、松本城と松本城公園を結ぶ橋です。黒い松本城と赤い橋が、鮮烈で耽美たんびな雰囲気を醸します。

松本城公園

公園の池

松本城公園は市民の憩いの場になっており、散策にもぴったり。はすの花が一輪咲いていました。

犬山城

犬山城の概要

犬山城

犬山城は、織田信長の叔父である織田信康によって築城されました。

別名、白帝城はくていじょう

豊臣秀吉が入城し、徳川家康とにらみ合いが続いた歴史が残っています。個人所有の城として、過去に成瀬家が所有していたことも特徴です。

日本最古の天守

外回廊

天守は、現存する日本最古のもの。他の城との大きな違いは、天守の外回廊を歩けることです。回廊を一周すると、木曽川、伊木山、犬山橋など、東西南北の風景を眺望できます。柵の高さが腰より低いため、高所恐怖症の方には怖いかもしれません。

唐破風

唐破風の外観

唐破風からはふは、丸みをつけた破風の一種。

唐破風の間

正面から見える出窓のような場所は、内側から見るとこんな感じです。

犬山城下町

犬山城下町

戦国時代から続く、木造建築が残る犬山城下町。当時の雰囲気を色濃く残しており、そぞろ歩きも楽しく多くの観光客でにぎわっています。

松江城

松江城の概要

松江城の外観

松江城は、山陰地方で唯一の現存天守になります。

別名、千鳥城ちどりじょう

外壁の多くが黒色の下見張りで、石落としや石打棚など、実戦を強く意識して築かれました。優雅な千鳥破風があり、宍道湖の眺めが美しいものです。

松江城の天守

5階の天守は、壁のない360度の展望が広がる望楼。

北惣門橋

北惣門橋

城につながる木橋の北惣門橋が、復元されています。優雅な遊覧船も楽しみのひとつ。堀川遊覧船は、大人1,500円です。

石打棚・塩蔵・井戸

石打棚

いくさを強く意識して築城された様子が、当時のまま残されています。石打棚で石を砕き、石落としに使われました。井戸を覗き込むと、吸い込まれるような高さでした。

興雲閣

興雲閣

興雲閣こううんかくは、松江城二ノ丸に建つ明治建築です。皇室の宿泊所としても使用されました。郷土資料館として、無料で見学できます。併設する亀田山喫茶室で、休憩するのもよいでしょう。

宍道湖の夕陽

最後に見ておきたい、宍道湖しんじこのサンセット。島根県立美術館が夕陽鑑賞のスポットになっており、市民の憩いの広場になっています。

あとがき

私は、播州ばんしゅう生まれで、幼少期に姫路城や姫路動物園で遊んで育ちました。良くも悪くも、姫路城がお城の基準にすり込まれています。

ゆえに、全国のお城を訪れた際に、鉄筋やエレベーターの近代施設を見てしまうと、少々残念な気持ちになってしまいます。

しかし、今回めぐり歩いた5つの城は、さすがに国宝。天守が丁重ていちょうに保存され、行政が観光誘致に尽力され、携わる市民が愛情を注いでいる様子がうかがえました。

お城は、世界でも類を見ない日本独特の建築美。日本人の大切な遺産ですね。

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