アントワープ中央駅は、世界一美しいとされる駅。
ガラス張りの屋根、ドーム型の玄関ホール、荘厳なたたずまいは、ベルギーの重要文化財に指定されている。とても現役の駅とは思えない壮麗さだ。
そして、アントワープといえば、フランダースの犬。ネロが見たかったルーベンスの絵画「聖母被昇天」も観てみたい。
12月のアントワープ。クリスマスマーケットの装飾でにぎわう街を訪れた。
アントワープ中央駅
アントワープ中央駅(Antwerpen-Centraal)は、ベルギーのアントワープにある歴史的な美しい鉄道駅で、しばしば「世界で最も美しい駅」と称される。
1905年に開業したアントワープ中央駅は、ベルギー建築家ルイ・デラセンセリによって設計された。建物のスタイルはエキレクティシズム(折衷主義)と呼ばれるもので、ロマネスク、バロック、ルネサンスなど複数の建築様式を融合させている。とりわけ、ドーム型の屋根やアーチ型の窓、そして大理石や石材を多用した豪華な装飾が特徴的。
ブリュッセル中央駅から、ベルギー国鉄に乗りアントワープ中央駅へ向かう。約40分で到着できるはずだ。ところが…早速やらかした。
海外あるある。降りる駅を間違えた。アントワープC駅(中央駅)で降りるはずが、アントワープB駅で降りてしまった。世界一美しいはずの駅が、どうりで平凡な駅だと思った…
ヨーロッパの駅は、改札もなく駅員もいないことが多い。しれっとホームに戻ってみたが、30分後に来るはずの電車が待てども来ない。なんのアナウンスもないまま、ようやく1時間後に次の電車がやってきた。
気を取り直して…
こちらが、アントワープ中央駅。
内部は細やかな装飾が施され、光が差し込むガラス屋根や、美しくデザインされたアーチ状のガラス窓が訪れる人を圧倒する。プラットフォームは3層にわたって配置され、地下鉄から地上、さらには高架に至るまで、鉄道システムが縦に重なるユニークな構造。
アントワープ中央駅は、フランスの高速列車「タリス」や、オランダの「インターシティ・エクスプレス」といった国際列車が乗り入れ、ヨーロッパ各地へのハブにもなっている。
絢爛豪華な駅の構内に目を奪われる。駅舎の正面は壮大な石造りで、中央には巨大なドームがあり、まるで宮殿のような外観を持っている。
そして、ル・ロイヤル・カフェ。駅の構内で営業しているカフェまで洒落ている。この駅舎は、通勤するビジネスマンの多い駅でありながら、その美しさゆえに観光名所にもなっている。映画やドラマのロケ地として利用されることも多く、駅構内にアート作品が展示されることもある。
コーヒーを注文すると、おいしいクッキーが付いてきた。通勤で飲む朝の1杯は、至福のひとときなんだろうな。
さて、駅からノートル大聖堂までアクセスする。トラムで移動すると簡単だが、ゆっくり歩いてクリスマスの街並みを楽しみたい。
これは、1565年に完成したアントワープ市庁舎。ルネサンス様式とフランドルゴシック様式が融合した建築スタイルが特徴で、観光名所のひとつになっている。三層構造のファサードが印象的で、上層に市のシンボルや神話のキャラクターがあしらわれている。
市庁舎の前にある銅像は、古代ローマ人のブラボー。ブラボーが、巨人の手(アント)を切って投げた(ワープ)ことから、アントワープの地名が付いた。
ノートルダム大聖堂とルーベンスの絵
さて、お目当てのノートルダム大聖堂に到着。
ノートルダム大聖堂の建設は、1352年に始まり、169年後の1521年に完成した。ゴシック様式の特徴である尖塔アーチやステンドグラス、彫刻で飾られたファサードが印象的。中央には、アントワープ市街を見下ろす高さ122mの鐘楼(ベルタワー)がそびえ、世界遺産に登録されている。
特大のクリスマスツリーは、夜にライトアップされる。そして、大聖堂の前に、ネロとパトラッシュが横になっている。
???
どうやら、中国人が造ったらしい…ネロもパトラッシュも、もっと可愛いだろ!(怒)
日本で大ヒットした感動のアニメ「フランダースの犬」は、ベルギー人には馴染みが薄い。悲しいバッドエンドの物語が、万人受けしないようだ。
美しい祭壇中央に「聖母被昇天」
ノートルダム大聖堂には、ネロが見たかった3枚の絵がある。アントワープ出身の画家ピーテル・パウル・ルーベンスの傑作がいくつも展示されており、どれも壮麗なスケールとドラマチックな構図で、訪れる人々を圧倒する。現在も大聖堂内で大切に保存されており、彼の天才的な技量を間近で堪能することができる。
左に「キリスト昇架」
右に「キリスト降架」
ネロを思い出すと、なんだか泣けてきた…。大聖堂なのに、まるで美術館を鑑賞したあとに感じるような高揚感が残った。
アントワープのクリスマスマーケット
ルーベンスの絵画を堪能したのち、街がライトアップされるまで旧市街を散策してみた。
これは、ブラボーが戦って切り落とした巨人の手。こんなところに落ちていた。
地ビールのアントワープシーフ。アントワープの商人や労働者に愛された歴史あるビールで、「seef」とは醸造という意味。柑橘系の香りに、スパイシーなコリアンダーのフレーバーが入った爽やかなビールで、アルコール度数は高めだった。ベルギーは、よく知られたビール大国でもある。
16:30 日の入り。イルミネーションが一斉に点灯された。街中の建物やツリーが電飾で彩られ、アントワープの頭文字「A」も誇らしくきらめいている。
もちろん、アントワープ中央駅もライトアップされていた。本当に宮殿みたいだ。
とても駅舎の玄関とは思えない。パリのオルセー美術館は旧い駅舎を改装したものだが、こちらはいまだ現役であることに驚きを隠せない。
今回の旅では、ブリュッセル、ブルージュ、アントワープ、3つのクリスマスマーケットに訪れた。グランプラスのプロジェクション・マッピングや、運河クルーズを楽しめるブルージュの街も素敵だったが、ベルギーに一夜しか居られないなら、アントワープの街をおすすめする。アントワープ中央駅は、一度は見ておいて損はないと思う。
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