スペインに「トレドを見て死ね」という諺がある。「1日しかスペインにいられないならトレドに行け」という意味だ。
風光明媚で最もスペインらしい街と言われる所以でもある。
イタリアにも「ナポリを見てから死ね」という諺がある。どちらを見て死ぬか迷うところだ。
ギリシャ人の画家エル・グレコが愛したといわれる古都トレドの街。どんな街なのか、訪れる前からワクワクする。
古都トレド
古都トレド。キリスト教・イスラム教・ユダヤ教の影響を受けた独特の街並みが、1986年に世界文化遺産に登録された。特に三つの宗教が共存した都市として「三文化の都市」とも呼ばれる。
宿泊したホテルから、遠くに旧市街を望めた。イスラム様式の建物が茶色に統一されている。トレドブラウンと呼ぶそうだ。
トレドは、首都マドリードから約70Km。イベリア半島の中央部、タホ川に囲まれた古い小さな都市である。展望台から旧市街のカテドラルが見える。小高い岩山の上に築かれた要塞のような街だ。
旧市街の中心にあるソコドベール広場。高台にある旧市街に入るために、エレベーターでアクセスする。なんだか近代的な設備に違和感を感じた。
旧市街を歩いていると、突然現れるゴシック様式のカテドラルに息を飲む。
200年以上の歳月を費やし、1493年に完成したトレド大聖堂。スペイン最高峰のゴシック建築。ファサード正面にある「免罪の門」の上には、「最後の晩餐」のキリスト12使徒像が並んでいた。
大聖堂のなかに入ると、エル・グレコの「聖衣剥奪」に圧倒される。時間を忘れて見入ってしまった。
そして、サント・トメ教会。こちらは、モスクを改装した教会。
エル・グレコの最高傑作と言われる「オルガス伯の埋葬」が展示されている。エル・グレコは、自分の芸術を高く評価してくれる聖職者や詩人たちを描くことで、心から敬意を表していたようだ。
エル・グレコ(1541年〜1614年)は、スペイン・ルネサンスを代表するギリシャ出身の画家。強烈な色彩と伸びやかな人体表現、そして深い宗教的なテーマが特徴的で、後の印象派の画家たちに影響を与えた。
旧市街を抜けて、タホ川に戻ってきた。サン・マルティン橋は、ゴシック様式を基調にした石造りの5連アーチが美しい。
歴史的背景から、様々な文化が融合したトレドの街。とてもエキゾチックな街だった。トレドを見たので、もう死んでもいいかもしれない。
ラマンチャ地方の白い風車
トレドからグラナダへの道中、ラマンチャ地方を通る。セルバンテスの「ドン・キホーテ」で有名な、白い風車群が立ち並んでいた。
ドン・キホーテが、風車を敵の巨人と勘違いし、愛馬ロシナンテに乗って突撃。従者のサンチョ・パンサが、ただの風車だと説得しても聞き入れず、風車の羽根に巻き込まれて吹き飛ばされるシーンは、彼の騎士道を象徴するエピソードです。
もともと34基あった風車。現在は10基だけが稼働しており、風車の内部を有料で見学することができる。
騎士になりたかったドン・キホーテのコミカルな冒険物語は、今も世界中で読み継がれる。青い空と白い雲。のどかにゆっくりと回転する風車。とても癒された。
アルハンブラ宮殿
スペインには、こんな諺もある。「グラナダを見たことがない人は、何も見ていないのと同じだ」
スペイン南部アンダルシア地方に位置するグラナダ。アルハンブラ宮殿は、イスラム芸術の粋を集めた最高傑作のひとつで、1984年に世界遺産登録された。
アラベスク模様や蜂の巣状の天井装飾ムカルナスが名高い。
アルハンブラ宮殿の最大の見どころは、ライオンの中庭。12体のライオンが、円形の大理石の噴水を支えている。この空間は、王族の瞑想や休息に使われていた。そして、美しい庭園へネラリーフェ。白い壁に囲まれ、緑の中庭を持つ家屋をカルメンと呼ぶが、スペイン女性の名前に多いカルメンの由来になった。雲ひとつない、絵の具で描いたようなコバルトブルーの空が印象的だった。
さて、グラナダの食事といえば、日本でもおなじみのパエリヤ。スペイン語で、パエージャ。大きなムール貝が美味しかったが、私はハマグリの方が好きかな…
バルセロナとガウディ建築群
旅は、最終目的地のバルセロナへ。街のいたる所で、アントニ・ガウディの建築群に圧倒される。なかでも代表作のサグラダ・ファミリア。着工から130年以上も経過しているが、ガウディ没落後もいまだに工事中。
教会のなかは、ラテン十字型。床から天井までの高さ45m。このような幻想的な教会は見た記憶がない。
自然光が降り注ぐステンドグラスも、ため息が出るほど美しい。2026年に完成するという噂もある。生きているうちに完成したら、もう一度訪ねてみたい。
グエル公園も、ガウディ作品群のひとつ。イギリス田園都市を構想した美しい公園だ。広大な公園には、色鮮やかなモザイクタイルの装飾が施されている。
今回の旅で見ておきたかったトカゲ(オオサンショウウオ)の噴水。陶器の破片を組み合わせたカラフルなモザイクで装飾され、公園のシンボルになっている。さすがにたくさんの観光客の人だかりで、最もにぎやかなスポットになっていた。記念撮影できて満足。
私達夫婦は、今は無きてるみくらぶ(2017年倒産)のツアーでスペインを訪れた。夫婦で合計30万円、JTBの半額という格安ツアー。トラブルが多いのではないかと不安だったが、他の旅行会社と比べて遜色なく、スペイン旅行を満喫することができた。日本からスペイン到着後すぐに、ツアー同行者がスリに遭遇していた。治安にはお気を付け頂きたい。
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